ひとひらの願い―幕末動乱―
誰だか暗くて判断はできないけれど、みんな、浅葱色の羽織りを身に纏っている。


新選組の象徴と言ってもいいほどの物。

―浅葱色で、袖や裾にだんだらの入った、羽織り。


それと、私に叫ぶその口調から、あの人物だと想像できた。


「ふっ…副長ぉ!!」


それは、ばったり会えないと諦めていた彼らの姿だった。

私は感動のあまり、その方向に向かって走っていく。


その度に、また鈴が鳴る。
常にあの人と一緒にいられるんだ、そう感じた。


「高蔵、お前、迷子になったのか?」


にやけながらも、副長は私にそう聞いてくる。

それはあながち間違っていないので、口ごもって何も返せなくなる。

そんな私を、みんなが笑う。
自分でも、笑う。


副長をはじめとした20数人は、確か三条方面を担当していたはず。

対して局長の隊は、四条方面を担当。


…ってことは私は、四条から三条まで歩き続けて来ちゃったってこと!?

でもそんなに離れてない……のかな? 少ししか歩いてないし……


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