ひとひらの願い―幕末動乱―
「まぁ、迷子だろうが何だろうがいいけどよ。近藤さん達が心配するだろうに」

「あ……」


心配されることなんて、前から気にしていた。

局長は他の人よりも、もっと心配してくれるだろうし。


「それに高蔵、総司のことだって気にしてたろ?」

「見てたんですか!?」

「チラッと見たら視界に入ったもんでな」


まるで「悪気はない」と言っているような口振り。

沖田さんを見ていたことが副長に知られて、どこか恥ずかしい気持ちになった。


―どうして……?


「そっ、それよりも副長! さっきの太鼓、何時ぐらいですか?」


そんな変な気持ちを紛らわすかのように、話を変える。


さっき、山崎さんと一緒にいた時。太鼓が鳴っていたことを思い出した。

私は祇園会所を出た時間さえ分からないから、今が何時かも分からない。


「あれはちょうど……夜四つくらいか? 亥の刻だな」

「亥の刻!?」


大変だ!!

夜四つは亥の刻、亥の刻は未来で言う午後22時……


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