ひとひらの願い―幕末動乱―
ただ見ているだけの私は、体が動かない。

今まで怖くなかったはずなのに、足が一歩も動こうとしない。


「……沖田ぁぁあっ!!」


その怒声を聞いて、私は決意をした。


居場所をくれた人達なんだから、恩返ししようって。

戦って恩返しできたならって。


思っていたのなら……



私は助けることで、恩返しをしよう――…!



ふいに体が軽くなって、足が一歩、また一歩と進められた。

短い廊下を、全速力で走り抜ける。


沖田さんに向けられた刀が、ちょうど沖田さんの頭上にきた時。


ギーン…ッ……


「織…さん……?」


振り下ろされた刀を受け止め、何とか間に合った。


こんなところで沖田さんに死なれるわけにいかない……!

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