ひとひらの願い―幕末動乱―
第10章 身命を賭して
「無事ですね、沖田さん」

「はい、何とか……ゴホッ」


まだ刀を受け止めたままだけど、振り向いて沖田さんと小声で話す。

二つの刀がカタカタといっている。
まるで、早くしろとでも言うかのように。


「……さ……でよ」

「ぁあ!? 何だ餓鬼が!」


俯いて、私は低い声で呟く。
でもそれは誰にも届かず、この男は怒りを露わにする。

自分でも何て言ったかなんて、覚えていない。

ただ、大切な人を失うのは辛いと、聞いたことがあったから。

あれは麗奈が言っていた言葉だったと思う。


『身近にいてね、しかもそれが自分の大切な人だったら――…』


「この人を殺さないでよッ!!」


『目の前でその人が死ぬより、自分が犠牲になってでも護った方が、自分自身は後悔しないと思うよ』


「私は―――…!」


『―だって、大切な人の傍で天国に逝けるんだよ? きっと幸せでしょ?』


麗奈の声が、脳裏に響く。

ただ何気なく聞いていた言葉が、今自分の置かれている状況と同じになっているんだ。


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