ひとひらの願い―幕末動乱―
沖田さんはそう言って、また笑い始めた。


もしかして……からかわれてる?

いや、もしかしなくても絶対にからかわれてる…!


でも私は、そんなことを気にしていないふりをする。


「で、どうして私が気が強いって言うんです?」

「どうしてって、織さん。こんなに恐ろしいおなごはいないでしょう!」

「なっ……! こんなところでからかわないでくださいよっ!」


沖田さんは目に涙を溜め、お腹を抱えるようにして笑っている。

でもその笑顔には、少し苦しい表情も含まれているような気がする。どこか辛そうな……


「はははっ…! まだそんなに笑える力が残ってるんですもんねぇ!」


それでもまだ笑える力があるんですねって、思わず言ってしまいそうになった。


…言ってはいけない。

沖田さんに、そんなことは言えないよ―…

するといきなり、沖田さんは笑うのをやめ、少しだけ顔に笑みを浮かべた。


「でもね、織さん。今の貴女の顔、今にも泣きそうなんですよ」


思わず、びくっとしてしまった。


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