ひとひらの願い―幕末動乱―
自分がそんな表情してるんだと思うと、沖田さんに向けていた顔を無言で背ける。


「何か辛いことでも、ありました?」

「いえ…別に……」


沖田さんまでにも悟られては……!


私が"未来から来た"なんてことを知っているのは、山崎さんだけで十分。

もう誰にも言わないし、悟られたくもない。


「今だけ……おなごに戻る気はないですか…?」

「えっ……!?」


だけど、私が想像していた言葉とは全く違う言葉が発せられた。

私は鬼になるとまで覚悟していたのに、今更女に戻るだなんて、考えもしなかった……


―ボスッ


…そして、いきなり私の視界は狭くなっていた……え…!?

私……沖田さんに……
抱きしめ…られて――…る―?


「ちょっ……沖田さん…?」

「…いいですから。暫く、休んでください…」


そう言ったきり、沖田さんは黙ってしまった。


沖田さんと私の呼吸する音と、私の耳元に響く沖田さんの鼓動。

その二つが、私を休ませてくれた。


目を瞑り、もう寝てしまいたいくらい、心は落ち着いていた。


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