ひとひらの願い―幕末動乱―
「織さん! 大丈夫ですか!?」


意識が朦朧として、瞼を閉じようとした時、はっきりとした声が聞こえた。

それはもちろん、沖田さんの声。

まだだ……こんな時にこんな所で、終わるわけにいかないんだ……!


「大丈夫…です、沖田さん……」

「刺されて大丈夫なんて言っていられるおなごがどこにいるんです!!」

「すいま…せん……」


また沖田さんは苦しそうに咳をする。

でもそんなことはお構いなしなようで、沖田さんは私の止血をしてくれた。


「本当は…私が貴女を守るべきなんです」

「どうして…です、か」


いきなり切なそうな表情に変わった沖田さんは、私の隣に座るなり、そう言った。


途切れ途切れになりながらも、私は力を振り絞って会話を続けようとする。

だんだん意識が遠のくのを抑えながら。


刺された傷口が、焼けるように熱い。
沖田さんの息も、熱いのが分かった。


「私は…近藤さんや土方さんを守るための…盾、なんです。だから土方さんの小姓である貴女も……守らなければと、思っていたのに―…」


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