ひとひらの願い―幕末動乱―
沖田さんは苦しそうに咳をしながら、言葉を続け、その最後に私を見つめる。

…のは、私の傷口の方だった。


「私のこと、なんか…気にしないで…くださ…」


息が続かなくなってきた。
胸が苦しい。ついでに瞼も重い。


「織さんが私より先に逝ってしまったら……私は本気で後悔、しますよ…? ゴホッ」

「沖田さんの方、こそ…私より先、死んだら…っ……許しませんから、ね……?」


無理矢理、笑みを作る。

こんなときに、作り笑顔だとしても笑っていられる自分が、やっぱりすごいと思う。


人は死ぬとき、笑って逝くんだろうか――?
人は死ぬとき、幸せで逝くんだろうか――?

―その答えは、人それぞれ。今は見つからない。


「笑えるんですね……私が守れなかったと…言うのに。逆に…守られてますからね…」


私につられたのか、沖田さんも微笑む。


きっとこの人は、笑って逝くんだろうな……
ただの私の予想と想像と……理想でしかないけれど。

そう思ったら、この現状も乗り越えられそうな気がして。


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