ひとひらの願い―幕末動乱―
望みがないわけではないんだ。

まだこの人達にも、私にも、明日はある。


導く光が消えかかったって、道があれば進み続ければいい。

私達は、今それを歩んでいる気がする。


「来ますよ……織さん」

「きっと…大丈夫ですよ…」


そっと気づかれないように、息を吐く。

お腹辺りの傷が、まだ熱い。
どうしても、この痛みだけは忘れられない。


どっちみち私は――――…


「このっ……壬生狼がぁあッ!!」


死んでしまう運命なのかもしれない。


振り上げられた刀……
そして目の前に、赤い飛沫が舞う。嫌な音と共に。


やっぱりこれが、定めってものか――――…


そう思って、重い瞼をゆっくりと閉じる。


自分でこの運命を受け入れる。

もうやれることは、きっと、したから。


「高蔵! 総司! 無事か!?」


あまり久しぶりでもないような、随分昔に聞いたような。
そんな声が頭に響く。


本当に夢の中、か……


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