ひとひらの願い―幕末動乱―
意識を手放したくはない。

もっと、ずっと、ここにいたい。


そう思ったら、一筋の涙が頬を伝った。


また……瞼が重くなり始め、涙が目から流れているなかで、私は目を瞑った。


「織さん……!! 死なないでください……!」

「高蔵! お前はまだ…」

「もとから私には…時間がなかった……だから……」


息が保たなくて、でもまだ話がしたくて。
もう駄目……なのかな。

さっきまで人を殺していたのに……
今では私がその殺される側。

矛盾してしまうけど、もう人は殺したくない。

平和が、一番だと気づけたから……


「後で……みんなにも…話しておいてください……」


意識が薄れていく中で、私はあの言葉だけは忘れなかった。

もう何度言ったか分からない、あの一言を。



「みんなに……ありがとう…って――…」


もういい……仕方ないか……

生きることを諦めたわけじゃない。
まだ生きたいと、心からそう思ってる。

でも……私のここでの命は、もう終わりだから。


意識を手放すことを、決意したんだ――…


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