ひとひらの願い―幕末動乱―
「…そう、言っておいてください……」


ふっと、笑みを浮かべた。

副長と沖田さんが今、どんな顔をしているか……そんなことも考える余裕なく、ただ笑った。

私は笑って逝ける女だった――…


「織さん……織さんッ」

「高蔵…! お前にはまだなぁっ…俺の小姓を……してほしかったんだよっ」


ごめんなさい、沖田さん、副長。
私は、この時代にまだ生きていたいんです。

でも……その夢は叶わなかっただけ。

それだけ…覚えていてください――…


「織さん…織…んっ……! い…で…よ!?」

「高蔵……蔵…!…――――」


あと……できれば、私がここに居た証も、全て――――…

残してくれたなら、私はそれだけで幸せです。


新選組の一員として、副長の小姓として、一日だけのタイムスリップだった。


もしこのまま現代に戻れたら、私は決して自殺なんかしません。

一瞬を楽しんで、生きていることの貴重なことを、身で感じていきたい……


そう、貴方達に……誓いますよ。


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