悠久の貴女へ
「仕方あらへんやろ。どうしようもなくて。初めてもった気持ちやったんからな」



顔は相変わらずの無表情。

でも、言葉にはちゃんと感情がこもっていた。


だから余計に何も言うことができない。

ただ見つめているだけ。



「気持ちの扱い方が分からへんかった」



両手のひらを見つめる山崎さんの目は、いつになく悲しそうなものだった。


泣きたいけれど、泣けないのは、彼も同じだったんだ。



「…せやから、心が読める自分を憎んだ。こんなもん…いらんわ」



織さんが未来から来たことも、それで知ったのだろう。


人の心が読めるっていう能力を、私は少し羨ましく思っていた。

何も知らないで。

さぞや辛いことだろうに。



「池田屋のあった夜、俺はあいつに会ってしもうた。もう邪念にしようて…思っとったのに……もう会わへんて…思っとったのに……」


「でもね、山崎さん。織さんは貴方に会いたがっていたんじゃないですか?」



途中、山崎さんの言葉に反応して、私は口を挟んだ。



「まぁ…そうなんやけど。…あいつが消えたて聞いて、俺は今まで経験したことのない感情に押しつぶされそうなんや…」


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