悠久の貴女へ
初めて恋した人が、突然いなくなってしまう。

そんなの、山崎さんには重すぎた。

忍だからと、感情を持たなかった彼が、知らない感情を味わうなんて、重すぎる。


でも――…



「…でも。織さんに出会えて、よかったんじゃないですか?」


「……!」



織さんが連れてきた感情は、悲しみだけじゃない。

楽しさとか……山崎さんに知らない感情を教えてくれたのだし。


私達に、影響を与えてくれたんだ。



「土方さんは、初めての小姓が織さんだった」


「…まぁな」



おなごを自分の小姓にするなんて、普通じゃ有り得なかった。


自分の傍に置いておけば、あまり心配せずに済むだろうって、きっとそう思ってのことなんでしょう。



「私だって……あんなに強いおなごは初めてでしたし」



強さの中に、少し可愛らしさのある人だった。

だから私は……

なんて、そんなこと言えませんけどね。


もうあの日に戻れなくても、こうして私達の心の中に、永遠に残ることでしょう……



「私達だって、織さんが来てから、変わったでしょう?」


「あぁ。あいつがあの日いなけりゃ、こんなことにはならなかっただろうな」


「…そやな」


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