悠久の貴女へ
「もうこの世の人ではないので」


「……!? お前、まさか……!」


「そのまさかでしょうね。ははっ…」



私は苦笑した。

驚いている土方さんに向かってじゃない。


叶わぬ恋をしてしまった自分にだ。


どうしてでしょうか……?

私は気づけば、貴女が好きになっていましたよ。


あの池田屋の夜。

貴女が消えた後、胸が痛んだ。



「お前……高蔵に!?」


「まったく! 土方さんたら、勘がいいんですから」



そうですよ、織さん。


貴女が消えてから、私は貴女への気持ちがあったことに気づいたんです。

それだけ知っていてほしいですよ、本当はね。



「高蔵か……」


「なっ…何ですか!」


「いや、何でもねぇよ。近藤さんにも伝えといてやる。お前は戻れ」


「…はい、では」



土方さんが最後に何か言いたげだったのは、どうしてだろう?

気になって仕方がない。


でも、考えるだけ無駄。



廊下に出て、暖かな陽の光を浴びる。


もうすぐ、桜の季節がやってくる。

そしてまた、彼女が来た夏がやって来る。



一年は短く、そして早い。



それを教えてくれるのは、きっと貴女なのでしょうね。

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