悠久の貴女へ
私が泣くなんて、自分でも何年振りかと思ったぐらい。


どうしてこんなに……どんどん溢れてくるんだろう。



―そうか。

この涙は、私のものじゃないのか。



「違いますよ。これは織さんの分の涙です……」


「高蔵のか…なるほどな」



土方さんは泣くことなく、そう言った。

でも、表に出さないだけで、本当は心の奥底で泣いているんだ。

私はそれを知っている。



「近藤さん、呼んでくる。お前はここに居ていいぞ」


「分かりました」



涙を拭い、土方さんに向かっていつものように笑顔を見せた。


扉が閉まると、部屋が静まり返った。

それが余計に私を独りだと感じさせた。



いずれ私もこういう時が来る。

そんなことは分かりきったことだけど、信じたくはないんだ。


もっと生きたい――…


そう願うあまり、私には時間が残されていない。



「織さんと山崎さん、会えたかな」



自分が何を言っているのか、考えているのか、分からない。


人を殺めていた自分を酷く非難した。


幕府、朝廷のためとはいえ、無数の人の命を亡き者にしていたんだと、今更ながら気づいた。



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