悠久の貴女へ
浅葱色はまだ消えない。
きっと幕軍がこの戦に勝ってみせる。
私は戦えないけど、武運を祈って、ただ近藤さんや土方さんの帰りを待つだけ。
「じゃ、失礼しますね、山崎さん」
もう何も言わない山崎さんを見ないように、私は部屋を出た。
そしてまた甲板に向かった。
「寒いなぁ…」
1月の冷たい風が吹き付ける。
春は…夏は来ないものかと、ふと思った。
甲板につくと、近藤さんの姿はもうなかった。
土方さんに呼ばれて、医者を探しに行ったのだろうと察しがついた。
外は真っ暗闇で、空には無数の星が綺麗に光り輝いていた。
海は黒光りして、落ちた時を想像すると怖かった。
「星は綺麗だなぁ――…」
きっと遠くない未来に。
空に散りばめられた星屑に、私もいつかなるのだろう。
そう思いながら、そっと目を瞑り、今は亡き人の姿を瞼の裏に浮かべた。
「いつか……会えますように」
悠久の貴女に届くように、心の中でではなく、小さく呟いた。
もう後戻りすることはできない。
でも、池田屋で戦ったあの日に戻れたなら――…
―もう一度、あの一日をやり直したい。
密かにその一つだけを、見上げる星空に願った。
―end―
きっと幕軍がこの戦に勝ってみせる。
私は戦えないけど、武運を祈って、ただ近藤さんや土方さんの帰りを待つだけ。
「じゃ、失礼しますね、山崎さん」
もう何も言わない山崎さんを見ないように、私は部屋を出た。
そしてまた甲板に向かった。
「寒いなぁ…」
1月の冷たい風が吹き付ける。
春は…夏は来ないものかと、ふと思った。
甲板につくと、近藤さんの姿はもうなかった。
土方さんに呼ばれて、医者を探しに行ったのだろうと察しがついた。
外は真っ暗闇で、空には無数の星が綺麗に光り輝いていた。
海は黒光りして、落ちた時を想像すると怖かった。
「星は綺麗だなぁ――…」
きっと遠くない未来に。
空に散りばめられた星屑に、私もいつかなるのだろう。
そう思いながら、そっと目を瞑り、今は亡き人の姿を瞼の裏に浮かべた。
「いつか……会えますように」
悠久の貴女に届くように、心の中でではなく、小さく呟いた。
もう後戻りすることはできない。
でも、池田屋で戦ったあの日に戻れたなら――…
―もう一度、あの一日をやり直したい。
密かにその一つだけを、見上げる星空に願った。
―end―