久遠の想い人
『心配せんでええ。俺がいつでもどこでも、織を見守ってるんやから』


「ありがとっ……ございます……」


『せやから泣くなって』



天でも地でもいい。

優しく見守ってくれる人がいるなんて、それだけでも嬉しいよ――――…



ずっと抱き締められていた体を解放され、自由になった。

蒸は微笑みながら私を見つめていた。



『また、会えるとええな』



不意をつくように、彼はそのままの表情でそう言った。

もう別れの時間だ、とでも言うような表情で。


それから何も言わずに私から一歩、後ろに下がる。


待って、と私は左手を伸ばす。




『“さよなら”、や――――…』




けれど、私の左手が蒸の体に触れた瞬間、再び柔らかな風が吹いた。


彼の体はきらきらと輝く砂になり、徐々に崩れて跡形もなくなっていった。





やがて真っ白な世界が、少しずつ色を取り戻し始める。


ビル、体育館、校舎、グラウンド――――…


次々に姿を現し、暫くすると元の世界に戻った。


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