久遠の想い人
「そういう麗奈は何願ったの?」



廊下を過ぎて教室に着き、自分の机に向かいながらそう問う。


偶然にも席が近い麗奈が机の上に荷物を置くと、席に座って私の方を向いた。



「……死んだ父さんに会いたいって。普通すぎる願いだよね」



ははっ、なんてそう言っては軽く笑う。

そんなの笑えることなんかじゃないのに、麗奈はいつも強がって笑顔を見せ続ける。



麗奈の父親は、数年前に車同士の衝突事故で亡くなった。

衝突されたのは父親の方だったから、余計に家族は悲しんだんだ。



大きな悲しみを乗り越えていても、笑顔を作って生きている。


そんなの寂しすぎるよ……



「普通すぎることはない。願って当たり前のことだよ」



麗奈の目をしっかりと見つめて、私はにこっとした。


悲しみを背負っているのに、無理しなくてもいいんだよ、という意味を込めて。



私の悲しみなんて、とても小さく思える。


だって、“あの人”に会えないことが私にとっての悲しみなんだから。


もう会えないことが分かっているから、余計に悲しくて、そして虚しい。




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