久遠の想い人
麗奈の目が僅かに輝く。

でもたったそれだけで、弱音なんて吐きもしなかった。



「ありがとう!……でも、叶わなかったんだけどね」


「そんなに悲しまないでも、きっとまた会えるよ」



“きっとまた会える”――…


そう、そうなんだ。


同じ時を生きたなら、またいつか会えるに違いない。

夢でも、何であっても。


私はそう信じる。


特に父親だから、家族のことが心配に決まってる。



私だって心配だから。

幕末の、新選組のあの人達が―――…



心配したって、どうしようもないことなのは分かりきっているけれど。

それでも気になってしまうんだ。



「始めるよ~!」



次の授業を担当する教師が現れ、私達に向かって大声で言う。

全員がその声に反応し、何人かが慌てて席に着く。



「―ねぇ、織。後で詳しく聞かせて」



肩をつつかれ、その方向に振り向くと、麗奈が笑みを浮かべて小声で言う。

私はそれに深く頷き、前を向いては目を瞑った。



――会える、絶対に。



自分を宥める呪文のように、心中でそれだけ呟き、瞼をそっと上げる。


呪文に答えるように、窓から差し込む光が私の目の前を照らした。




< 4 / 21 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop