久遠の想い人
「その驚きはもしや……織は外にするつもりなの?」


「いや、まだ全然決めてないしっ」


「ふーん?」



本当に決めていないのか、なんて疑うように私の顔を覗き込む。

何が言いたいのかは分からないけれど、問い詰められているような気がしてならない。



「ほら、京都の高校とかは?」


「京都!?何でまたそんな遠くに!」


「うっ……」



何も言い返せなくなるのを知っていて、麗奈はそう言う。

その上美陽までもが驚きを隠さずに、私に顔をずいっと寄せて大声を発する。



「京都の大学の附属高校とか入ったら、大学まで安心じゃない?」


「それだったら地元の大学の附属高校に入るけど……」



京都、か……


私が会いたいと想いを馳せる人も、昔はそこに生きていたけれど。

でもそれは今となっては、遠い過去の一時、瞬間。


会いたくても、もう会う術がないんだ。



「京都に行く気はないんだ?」



だったら会わなきゃ良かった、なんて私は思わない。


寧ろその逆。


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