ゴーストオブアイデンティティー
幸福の方へ向かって、かなりのスピードで疾走してくる。




敵―――とも考えたが、否定する。幸福に対抗する奴等は、バイクでの特攻などという、無茶で馬鹿げたやり方はしない。



では……………誰が?


その困惑が、幸福にリヴォルヴァーを構えさせるのを一瞬、鈍らせた。



気付いた時には、目の前まで迫っていた。

「っ!!」


感覚で一発放つ。バイクが、ぐらりと揺れた。当たったらしい。が、速度を落とす事なく、倒れる事なく、バイクは幸福の前を通り過ぎた。



その疾走する後ろ姿。

幸福は、撃てなかった。



通り過ぎる、数瞬の間。


ライダーと目が合った。


ヘルメット越しに見えた、痛みを堪える顔。

見覚えが、有った。

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