ゴーストオブアイデンティティー
慌ててハンカチを取り出し、止血する。じわりと血が滲んだ。


「何してるの!?どうしたのよ!?い、いきなり殴ったり……え、え?いやでもどうやって?」


事実を受け止めきれず、桐が一人混乱する中、

「出られない」

運命が痛みなどまるで無いかの様な、淡々とした口調で呟く。


「あ、当たり前じゃない!こんなにぐしゃぐしゃじゃあ開けられな―――――」

「違う」


運命は横に首を振り、

「何もしなくても、開いた」


「え?」

「今は、開かない」

「だからってこんな…」


桐はうめいた。開かないのは良い。分かった。しかし、だからと言って自分を傷付けてしまってはどうしようもない。


「何か他に方法があるはずよ。だから止めましょう?ね?」


「他って、何?」

< 128 / 503 >

この作品をシェア

pagetop