ゴーストオブアイデンティティー
言葉に詰まる。

「他って、何?」

「…それは」

「何?」

「…今は思い付かないわ」

「………」

運命は桐から視線を外し、壊れた端末にできた穴に、反対の手を入れ、中に詰まったケーブルを掴み、一気に引き抜いた。


盛大に火花が散り、端末は完全に破壊された。




「ヒトの創造物は、必ずヒトに因って破壊される」



そう言う運命に桐はぎょっとする。運命が、そんな事を言うとは思わなかった。

何故だか、運命が全く別の人物に見えた気がした。


幸福。

幸福の面影と、重なった。


「幸福が………言った」



未だ、運命は幸福に縛られているのか。

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