ゴーストオブアイデンティティー
甲高い電子音と共に、戸がスライドして開いた。

運命が桐を見る。


「桐」

「…え?あ、ええ…そうね、行きましょう」


感覚が麻痺している。

それともわざとだろうか。今、目の前で起きた出来事を、意識的に認知を拒否しているのか。


いや、拒否してどうする。

私は受け入れなければならないんだ。此れではただの逃げだ。

受け入れよう。
私は運命を何も知らない。
知らないから、拒否するんだ。
知らないと、人は恐怖する。
同じでないと、怖がる。
大衆心理。同じ色以外は拒否する、駄目な癖。

…………………。




桐は、目を背けなかった。


背けて、たまるか。

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