ゴーストオブアイデンティティー
背けたら何も視えなくなる。


世界は一瞬で閉鎖的になり、真実は曖昧となり、運命は亡霊に戻ってしまう。

鼻で笑ってやろうと、桐は思った。

鼻で世界を、この閉じられた世界を笑ってやろう。

運命が異常?
・・・・・・・・
だから、どうした?

・・・・・・・・・・・・・・
異常なんて概念、棄ててしまえ

世界は異常で、しかも奇妙だ。その中で暮らす私達も、奇妙な程に異常だ。

虚偽に満ち、ざわめく世界の、一体全体、何処が、正常だ?


桐はこうも思う。

逆説で、もしかしたら唯一運命が、座敷家が正常なのではないか。

常識を逸するこのハコという空間が、残虐な迄に世界の真実を貫いているのではないだろうか。

世界は故に拒否をした。

違わないか?



気付けば運命が既にいなくなっていた。

急ぎ足で迷路の様な廊下を歩き、玄関を探す。

すぐに分かった。着物が擦れた跡が残っており、辿れば玄関だった。

< 131 / 503 >

この作品をシェア

pagetop