ゴーストオブアイデンティティー
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明け方。零下まで冷やされたコンクリートの道路を、朝日の柔い日射しが照らしている。
「再生」された町が、三年振りに日の光を浴びた。
靄が少しかかる其の路に、
コツリ
という固い音を奏でるモノが通り過ぎた。
コツリ、コツリという靴音。
だが其の人物は見えない。
靴音だけが、ただ響く。
十字路まで来た時、其の靴音は止まった。
代わりに、
「ふーん…」
未だ幼い、少女の声が、何も無い所から聞こえた。
…否、声のする所に、何か蠢いている。不自然に空間が屈折していた。レンズ越しに視た世界にも似ている。