ゴーストオブアイデンティティー
いつの間にか、涙が出ていた。
拭っても、止まらない。

みっともないと思いつつ、しかし流れ続ける涙。


自責と、不甲斐なさと、不安と、恐怖と、苛立ちと、様々な感情とが入り雑じり、涙となって流れ落ちる。


嗚呼―――――――――悔しい

なんて無意味な、涙…





咽び泣くヤナセを、ヤヨは無言で見ていた。

その視線は、恐らく誰が見ても「温かい」と言う様な、優しい視線だった。




しばらくして、ヤナセが落ち着き始めて。


「ヤナセ」

ヤヨは呼んだ。

しかし応えない。


仕方ない、といった感じにため息をつき、ヤナセの正面に立ち、




「…………!!」


顔を固定して、唇を、重ねた。


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