ゴーストオブアイデンティティー
あの町から少し離れた、桐の住む町の外れ。

木にもたれ掛かりながら後ろを向けば、あの町が「見えた」

何が起きたのか、桐にはまったくもって理解出来なかった。一瞬の内に激変する世界。

ただ必死にバイクを飛ばし、逃げるしかなかった。

世界からも。

…………………幸福からも。


木の葉が風で落ち、桐の左足に触れた。

「く……っ!!」


激痛が桐の全身を貫き、息が出来なくなる。

左足の太股。EDWINの水色のジーパンが、朱色に染まっていた。

先程幸福とすれ違い様に撃たれた部分だ。焼けるような感覚と撃たれたショックで、顔が青ざめている。


日本に生まれて、まさか銃で撃たれるとは思わなかった。

そして、寒い。
外気の寒さでなく、内側からくる寒さ。

傷口から体温が流れ出ていく。

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