ゴーストオブアイデンティティー
アイツを初めて見た時、いつだったか。

物心とやらがついて間もない頃か。


儚が、死んだ時か。

死んで間もない頃。


いつの間にか、アイツが居た。
居たが、居なかった。拒絶されていた。
いつの間にか、

「イミゴが……」

が古傷の口癖と成っていた。
忌み子。
亡霊の如く、閉じられた空間に潜むモノ。

儚の部屋に、アイツは居た。

ある夜。
珍しく開いていた儚の部屋。

何も無いはずの部屋の隅に、独りぽつりとしゃがんでいた。



あの時のアイツは今と変わらず。
うぐいす色の和服を纏い、腰程の長さの黒の長髪。整い尽くした幼い顔で、ただただ何かを見つめていた。


声をかける事は無かった。幸福には出来なかった。

あの頃は未だ未だ餓鬼で、知識ばかりの役立たずで、座敷わらしでも世界の中心でもG0でもなかった。

世界の欠片にすら成れていない、踏みにじられる塵の塊。

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