ゴーストオブアイデンティティー
一度だけ、桐は幸福に会った事があった。
父が座敷家の取材を許可された時の事である。
まだ小学校にあがりたての頃。父に連れていってもらった覚えがある。あの時はまだこの町は生きていて、活気があった。
父が取材をしている間、桐は巨大な日本家屋の中を探索して廻っていた。
その時に、幸福と出会った。
幸福の第一印象は「恐怖」だった。
子供の桐から見ても、幸福は異常な存在だった。桐の目を惹いたのは、恐ろしい程に整った、中性的な「面」。
表情はなかった。能面を被った様な、無表情。
そこには美しさ故の恐怖があった。
父が座敷家の取材を許可された時の事である。
まだ小学校にあがりたての頃。父に連れていってもらった覚えがある。あの時はまだこの町は生きていて、活気があった。
父が取材をしている間、桐は巨大な日本家屋の中を探索して廻っていた。
その時に、幸福と出会った。
幸福の第一印象は「恐怖」だった。
子供の桐から見ても、幸福は異常な存在だった。桐の目を惹いたのは、恐ろしい程に整った、中性的な「面」。
表情はなかった。能面を被った様な、無表情。
そこには美しさ故の恐怖があった。