ゴーストオブアイデンティティー
スコープの先が、闇風の頭部を捉えた。

軽く引き金を弾けば、2秒後には闇風の身体はぼろ衣の如くに散るだろう。

…………うまくいけば、だが。


「知れば知る程命が小さくなる事柄なんですよ、これは。私も詳しい事はわかりかねますが、逆に言えば、知らなかったからこそ、今生きている。幸運ですね。いや、悪運…かな?」

「しかし何の為にあんな計画を?生物学系統は座敷古傷が管轄じゃなかったのか?」


故・座敷家当主である座敷古傷は、生物学の専門家であった。

と、いうより、座敷家当主は代々生物学の極地に立つ人物であった。

恐らくは、極秘事項の厳守が目的だろう。

座敷家という存在が、何故こうも天才、異才、天災児のみに溢れているかの、秘密だ。

想像すらままならない事項なのだろう。ヤナセには1mmたりとも届かない、唯一にして孤高なのだから。


それを…………闇風という、当主でない、『半端』な存在に託した。


何故だ。

< 184 / 503 >

この作品をシェア

pagetop