ゴーストオブアイデンティティー
「何が…………」

起こった、と、ヤナセは言うつもりだったが、


「え?」

ヤヨの絶句にのみ込んだ。


スコープを覗き込んだまま、固まっている。


「ヤヨ?どうしたんだ?」

「…当たりです、ヤナセ」


その一言で、ヤナセは理解した。


「まさか…本当に」

そう。

ヤナセも半信半疑だったのだ。
まさか。
まさか来るとは思わなかった。


「ヤナセ、命令を」
     ready?
絶句から一瞬にして、ヤヨの声色が低く、無感情になる。

ヤナセは一言だけ。
ヤヨに伝える。

「…GO」



ヤナセも双眼鏡を覗く。










座敷幸福が、病院内を、駆けていた。

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