ゴーストオブアイデンティティー


      **


目が、醒めた。

鎮静剤でも射たれたのだろう。気だるい痺れが全身を這っている。登山後の疲れと似ていた。

何が起こったかを思い出した桐は、起き上がろうという気力すら消えていた。


運命が、消えた。

拐われたか。
若しくは、自ら桐のもとを発ったか。

どちらにしろ、消えたのだ、運命は。

其の事実は、どう足掻こうとも変わらない。


何故だ、とは特に思わなかった。

「自身の無力さ」が理由と解っていたからだ。


何なのだろう、この虚しさは。

結局のところ、桐は運命に……





見限られたのだ。

見棄てられたのだ。

棄てられ、たのだ。
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