ゴーストオブアイデンティティー
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目が、醒めた。
鎮静剤でも射たれたのだろう。気だるい痺れが全身を這っている。登山後の疲れと似ていた。
何が起こったかを思い出した桐は、起き上がろうという気力すら消えていた。
運命が、消えた。
拐われたか。
若しくは、自ら桐のもとを発ったか。
どちらにしろ、消えたのだ、運命は。
其の事実は、どう足掻こうとも変わらない。
何故だ、とは特に思わなかった。
「自身の無力さ」が理由と解っていたからだ。
何なのだろう、この虚しさは。
結局のところ、桐は運命に……
見限られたのだ。
見棄てられたのだ。
棄てられ、たのだ。