ゴーストオブアイデンティティー
「ふふ…何が信頼、よ」

相変わらず針が付いたままの腕を目に当てる。刺さっていた針が抜ける感触がしたが、別段構わなかった。


針から漏れる点滴の黄色い液体が、シーツに大きな染みを作っていく。

時計を見れば、四時を回っていた。そこまで長くは眠っていなかったらしい。

針が外れた事を知らせるブザーが、無音の室内に小さく響いた。


看護師が来て、また先輩や親から色々と聞かれるのだろう。

嫌だ。

どうせ、誰も信じない。

運命という「事実」が無い限り、私は虚偽幻想に惑わされただけと、言うしか、無いのだ。


………………負けた。







…………………………私は何に負けたのだ?

< 189 / 503 >

この作品をシェア

pagetop