ゴーストオブアイデンティティー
ジャリッ、という炭を踏み潰した音をたて、桐はある一軒の邸跡の前で一息をついた。


「確かここ…よね、座敷家跡は?」



熱により崩れかけた、積み上げられた石垣の塀。

焼け崩れてはいるが、型は残っている巨大な神社の門のような門戸。

広大な、土地。


間違いなく、座敷家跡である。

幼い頃の風景と一致した。



桐は、首から下げたカメラの点検を始めた。


父から譲り受けたライカ。桐の宝物だ。


「ストロボ…オッケーね。曇り…なし。レンズ…傷なし、と」

レンズを覗きこみながら呟く。


「何て言うか、因果よね。起こるべきして起こった、みたいな」


桐の仕事。それは元々、母の仕事だった。
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