ゴーストオブアイデンティティー
その様子を、見る者。見守る者。


座敷 幸福

部屋の隅の壁に寄りかかり、疲れきった身体を休めるでもなく、生気を失いかけた目を、桐に向けている。


足元には空の瓶と、ほぼ丸々一本、吸うか吸わないか程度で火が消された煙草が入った灰皿。

天井は、幸福がいる部分だけが黒ずんでいて、小さな通気孔があった。


「……うざってえな」

そんな幸福の呟きを、

『あなた自身が持ち込んだ問題ですよ、幸福?自己責任です』

たしなめる者の声。

おとなしめな、女性の声。
大人びている、の方が正しいか。

しかし声のみで、その人物は、見当たらない。

「…そんな下目線の言い草なんざ聞きたくもねえ」


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