ゴーストオブアイデンティティー
月光に照らされた濃い陰影が、シャッター越しに印象的に映っている。

水墨画を思わせる、淡い淡い、濃淡で構成された世界。


桐は何かにとり憑かれたようにシャッターをきった。


シャッターをきる度に、桐の気分が高揚した。


が、しかし、それと同時に桐の体調の異変が強くなった。


屋敷の奥に行く程、目眩が強くなる。


遂には、立っていられなくなる。吐き気さえも込み上げてきた。


「何なのよまったく…」


貧血の類だろうと桐は考え、一先ず邸の廊下の部分に腰をおろした。

煤で気に入っているジーパンが汚れたが、今の状況では、仕方ない。


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