ゴーストオブアイデンティティー
どうせ、桐が女だという事を全く気にもしていないのだろうが、どうも納得できないやるせなさが募る。

無駄に女は損だと、桐はため息をついた。



足はあまり感覚が無い。痺れたあとのじんわりとした状態に近い。麻酔でも射たれたか。


引き摺りながら幸福のところまで歩き、肩に恐る恐る触れる。


「あの……座敷幸福?」


はっと我に返った幸福は、なんとも不思議な表情を浮かべた。

ばつが悪いとでもいうような、そんな、


人間味のある、表情。

が、その表情はすぐ消え、元の無表情に戻った。



「………うざってえ」

桐にも聞こえるか否か程の声で呟く。

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