ゴーストオブアイデンティティー
「なに?私の事?」

「………口癖だ。気にするな」


割れた破片の中から薬を素手で拾い集める幸福。

拾った薬は、コートのポケットに直に入れた。


「余計な御世話かもしれないけど、汚いわね、それ」

綺麗好きな桐には信じ難い雑さだ。その薬を口に入れると思っただけでぞっとする。

棘の生えた桐の言葉に、

「僕用の薬だ。お前には関係無い」

仏頂面で幸福は答えた。



「それ…何の薬なの?」


「知ってどうする。使うか?」

零れた薬の二粒、桐の前にかざした。

「やる。持っとけ」

「だから何の薬よ?」

「…そのうち分かる」

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