ゴーストオブアイデンティティー
『幸福…良いのですか?そんな危険物を』

薬を摘まもうとした桐の手が止まった。

「危険物…なの?これ」


『一応は』


「…あなたコンピュータなのに曖昧ね」

『AIですから』


にべもなくそう言われ、桐は肩をすくめ、幸福の手から薬を取った。


取る時、幸福の手を見て、綺麗な手だと、桐は感じた。

もっと無骨な手を想像していたが、実際は女子の手を思わせるくらいに繊細だった。

「どうした」


「………別に」

思考を振り払い、さっさと取る。透明なカプセルには、緑がかった白い粉が詰まっていた。


匂いも、特に無い。

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