ゴーストオブアイデンティティー
「…麻薬じゃないわよね?」

「僕がそんなはじけた輩に見えるか?」


桐はまじまじと見、

「…ないわね」


薬に息を吹き掛けて汚れを取り除き、思い切って一粒、口に含んだ。

噛み砕く。


思いの外あっさりとカプセルは破れ、何とも言い難い独特の強い甘味が口の中に広がる。


「………お前、馬鹿か?本当に食う奴があるか?」

呆れた物言いの幸福に少し腹がたったが、我慢する。


「…何、これ?本当に薬?」

飲み込んだ後は、微妙な後味が残った。


砂糖とは違う、溶けると粘質を持つ粉。




…………………。

桐の頭に、とある薬の名が浮かび上がった。

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