ゴーストオブアイデンティティー
「…………!?」


それは急であった。


誰かに見られている。


視線を感じる、ゾワリ、とした刺々しい空気に、桐は身を固くした。



「誰か…いる…の?」


目をつむりながら、桐は独り言のように闇に話し掛ける。


存在感が増した気がする。
開けたいが、拒否する目。


闇が確実に桐の恐怖心を煽り立てる。


音――


何か、そう、例えば幼子が着物を引きずるような音。


近付いてくる。


身体の中で鐘が鳴り響いている。

身体が動かない。

動かないと。

動かないと。

動かない

――――動かないと!!


自分の可能な限りの反射神経、筋肉を使い、桐は飛び起きた。


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