ゴーストオブアイデンティティー
そう、思いたい。



実験を始めて、約1週間。

残る研究員は、僅かに三人。


リヒャルト・デイトリッヒという、ドイツの心理学者と、柳瀬和樹という、若い男。驚いた事に、彼は大学院生だった。そして、私を含めた、三人。


彼等とは、友情みたいな結束が出来ていた。

そうでもしないと、精神がやられてしまう。共に肩を貸し合わないと、共倒れになるからだ。

ぎりぎりの一線。


当然、酒にも逃げた。


その時の会話だ。

例外が、出たのは。







「アッハハハハハハハ!!そうかそうか!?アイツそんな事言ってやがったのか!?ママァ、こノオニンギョさん、抱いていーいってか!?ブッハハハハハハハハハ!!」

リヒャルトがそいつの真似をして、笑い転げていた。

リヒャルトは日本語が達者で、会話は普通に出来た。

「そうそう!!そんで『自分もオニンギョさんになる!!』とか言ってコンベアに寝そべっちゃったんすよ!!」


和樹は、普段は見るからに気の優しい学生なのだが、最近酒が入る度に人格が変わった様に荒れていた。

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