ゴーストオブアイデンティティー
「和樹、君を抱きたくなったよ」

「………何急に言い出すんですか。からかわないで下さいよ」

顔を赤らめた。

「ふふ、嘘じゃないさ。君のうぶなところが可愛くてね。ああ、でも君は彼女がいるから駄目か」


「彼女?いませんよそんなモノ」



「あの子の事だよ?被験体No.84さ」

和樹の顔が強張った。


被験体No.84
現時点で、唯一の成功。



決して成功とは言えない。しかし、あれだけの荒療治、細胞促進薬、つまり成長促進薬を投与して生き残ったのは、彼女のみだ。


座敷に最も近い存在。

「和樹。彼女を、どう思う?」

「…別に」

私はあまりに和樹の素朴な反応に笑ってしまった。


「ちくりゃしないさ。安心してくれ。良い子だろう?」


「………間違ってる」
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