ゴーストオブアイデンティティー
「イエス、サー。大丈夫ですよ、そんなに心配しなくても」


男を和らげるように、女は少し笑って返した。

「あくまで私達は死線(デッドライン)。無茶はしません。それとも、なんですか?私が所構わず銃を乱射するような危険人物に見えますか?」


男はきょとんとした後、「そうだな」と軽く笑って肩をすくめた。


「君がそんな事をするような事態にはならないだろうね。あるとしたら戦争くらいだ」


「……言いますね。後でお酒の席でじっくりと語り合いたいものです。…あ、そうそう、忘れてました」


「何かあったのかい?」


「武装した集団が、今私達の前を小走りで走っています」


本当に些細な事のように、女は告げた。


「………なんだって?」


「ざっと数えて10人程度。装備等から、恐らくEUあたりだと思われます」

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