ゴーストオブアイデンティティー
「今日はお開きにしよう。お休み、和樹……ああ、リヒャルトを持っていってくれたまえ。暑苦しくてかなわん。なに、適当にベッドに積んでおけば大丈夫さ。直に目も醒めるだろう」


和樹とリヒャルトが出ていき、独りとなった部屋の静けさが、妙に染みてきた。

「いかんな、酔ってる…和樹に今度、掃除を頼むとするか」


ベッドの上に散らばった本を床に放り、私は横になった。

まったく………女の部屋だとは信じ難い汚さだ。嫌になる。


「私の心、そのものかもな…」

こっ恥ずかしい台詞がそう聞こえないのは、かなりキテいるからか。

瞼を閉じる。


暗闇の中、私は先程の和樹の問いを反芻した。


心無きモノ……か。


いたら、会ってみたいものだ。

その存在は、私達を凌駕するだろう。


圧倒的、価値。

< 313 / 503 >

この作品をシェア

pagetop