ゴーストオブアイデンティティー
「……銃…下ろして」

「……」

舌打ちしつつ、幸福は懐にリヴォルヴァーをしまった。


「…こんな感じで厚意を断られたの、初めてだわ」


何さまったく、と桐はぼやき、布団を幸福に投げ付けた。


「病人は布団被って寝てなさい」

「…てめえが指図すんじゃねぇ。僕の事は放っておけ」

布団を蹴り飛ばし、桐を睨む。


「そういう訳にはいかないの。あなたが運命の場所知ってるとか言うから、早く回復して案内してもらわなきゃ、困るのよ。それにそんな所で寝られちゃ、たまったもんじゃないわ」


「……………………………」

信じられなかった。


「ムトだって言ってたのよ。あなたをなんとかしろとか……………どうかしたの?」


「………寝てたのか、僕は」

「…何言ってるの?」


いぶかしげな表情の桐をよそに、幸福は動揺していた。

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