ゴーストオブアイデンティティー
眠っていた。


それは、幸福を動揺させるに充分な事実だった。

「…眠っていた、か……」

幸福は、自分が眠った、という記憶が全く無かった。
勿論、眠りはする。人間、もとい殆んどの種類の生物には、睡眠は欠かす事が不可な行為である。

幸福の言う記憶の無い「睡眠」とは、「身体を欲求に預けたが故に起こりうる睡眠」であり、「生命体として活動する為の必須的な休息」ではない。



眠っていた。

まるで、何事もないかのように。
何時、闇風が来るかも知れない時に。

それ以前。


倉崎桐が居るにも関わらず…


「ムト…………教えろ。僕は…何分眠っていた?」

『1500.55分。時間にして、約25時間です幸福。ゆっくり休めましたか?』

「…なに?」

耳を疑った。……25時間?


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