ゴーストオブアイデンティティー
『愚かしいです。悩ましいです。呪わしいです。忌まわしいです。みすぼらしいです。幸福、あなたは馬鹿ですか?世界の中心が、こんな事も分からないのですか?』

「…………………」
「なっ…!?ちょっ、言い過ぎじゃないの?」


突然の暴言の数々に、桐の方が驚いた。幸福は、無言だった。

『倉崎桐。貴女は知らないかもしれませんが、幸福に残された本当の時間は其ほど長くありません』

「知ってるわよ。昨日聞いた」

『それは虚偽の事実です。虚偽となった事実、とでも言えばいいでしょうか?』

「え?」

幸福を見る。幸福は苦々しい顔をして、リヴォルヴァーを乱暴に畳に置いた。

「本当…なの?」

『本当です。計算によれば、幸福に残された時間は残り――』

「8644.36時間。約360日」

機械の様に、幸福の口から正確無比な数字が羅列していく。

「……でも何で?」

『桐。幸福は機械ではないんですよ。これでも一応、人間なんです』

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