ゴーストオブアイデンティティー
切られた携帯電話をしまい、男―――ヤナセはため息に埋もれた。


あいつにはいつも、嫌な役をさせてしまう。

自分が居座るここ、トーキョーから数百km離れた地点で起こる、静かな殺しあい。

否、そんなレウ゛ェルではない。惨殺だ。虐殺だ。一方的な、殺戮だ。


総ては、NWOHG計画の為。

そんな建前にすがり付く自分に、ヤナセは吐き気を覚える。


人を見殺しているようで。

命を弄んでいるようで。

そして実際、弄んでいて。


吐き気がする。


ヤナセは自分の進むべき道が見えなかった。

善か悪かは関係無い。

己の信念に基付いた生き方をしているか。
世界に踊らされていないか。

これさえはっきりしていれば、自分の進むべき道が見えてくる。

だが、ヤナセには見えなかった。

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